会長からのメッセージ

お金儲や権力を目的としない生き方とつながりの知を求めて

〇 本学会の対象とするNPOは、いわゆる「NPO法人」(特定非営利活動法人)だけではありません。非営利組織(non-profit organizations)全般です。実は、さらに広く、「NPO、NGO、ボランティア、フィランソロピーなど、⺠間⾮営利活動」全体を対象としています。

〇 私たちの社会には、営利追及を基本とする企業セクターと、究極的には権力に基づく統治を行う政府セクターとがあります。しかし、第三のセクターとして、人々の人生の豊かな意味を表現するセクターとして市民社会セクターがあります。本学会が研究対象をしているのは、この市民社会セクターです。
 このセクターは、コミュニティセクター、多元セクター、非営利セクター、ボランタリーセクターなどとも呼ばれます。人が生きていく時の大切な手段として、市場で活動する企業と政府・行政機関はとてもとても重要です。しかし、同時に、それらの道具を生かし評価したチェックしたりするのは、権力やお金儲けを目的としない、人々の生活とつながりの力です。

〇 民間非営利組織には、スポーツや演劇、芸術、学問のような様々な領域で、自分たちが楽しんだりする仲間の団体もあります。
その楽しみを広げもっと多くの人々に広げたいと考え、子供たちに教える機会や入門イベントをしている団体もあります。庭造りが好きな方が、自分が丹精した庭を、一年に数回公開して、多くの人々に見ていただく喜びを味わいつつ、一般の方々に憩いを提供するような活動もあります。これらの、自己表現的なNPOの活動はどんどん広がっています。
 さらには、お金からも権力からも見放され、それらの世界の論理や価値によって切り捨てられ否定された人々を、力強く支援をする団体もあります。古くから、まさに「公益」を追求する献身的な団体の活動は、私たちの社会で重要な役割を果たしてきました。周知のように、国内の貧困や孤独に対しても、また国際的紛争の被害や貧困の問題に対しても、正面から取り組んで、大きな成果を出している団体もあります。
 これらの活動を展開するには、政府との協働も、企業との協働も不可欠です。行政目的実現のためにも、また企業の企業価値増大の取組のためにも、両セクターとNPOとは、独立のセクターの担い手として、緊張感のあるきちんとした協働を進めています。近年は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」達成のためにも、セクター間の協働の一段の飛躍が求められています。

〇 本学会は、1999年に、阪神淡路大震災での被災地支援ボランティアの息吹が大きな力となって設立され、2019年に20周年を迎えます。しかし、非営利社会活動の歴史は、人類史とともに古いものです。そして、これからの未来においても、よりよい社会を作るためには、お金も権力という道具に振り回されない、人間らしい社会を作るために、NPO活動・非営利社会活動の豊かで健全な発展が不可欠です。
 そのための知、刺激的な知を得、発展させる協働事業に、NPO研究者のみならず関係諸学問の研究者の方々、また教育者の方々、研究マインドを持った実践者・市民の方々に、本学会は広く門戸を開いています。ぜひご参加いただき、おもしろいワクワクするような刺激的な知を発見、開発し、共有する事業を進めてまいりましょう。

2018年6月
日本NPO学会会長 岡本仁宏
(おかもとまさひろ)