「自殺対策」の政策学

書籍のご紹介です。

著書名:「自殺対策」の政策学―個人の問題から政策課題へ―

著者:小牧 奈津子

出版年月日:2019年12月20日

出版社:ミネルヴァ書房

ISBN: 9784623086948

概要:

本書は、自殺が個人の問題から社会の問題へと変化する中で、政策課題としての自殺対策に焦点をあて、自殺対策が公共政策として成立するに至った過程や要因を、丁寧な実証的分析によって解き明かそうとした意欲作である。序章では、自殺問題に関する社会的背景と研究目的が整理されている。第1章では、自殺基本法制定前の社会状況について自殺予防が取り上げられ、第2章では自殺の社会問題化と自殺基本法制定の過程が描かれている。第3章では自殺対策基本法制定後の政策過程が、そして第4章では、東京都足立区の自殺対策事例、第5章ではいのちの電話の事例が整理され、その成果や課題が浮き彫りとなる。第6章では、自殺対策基本法の改正過程における言説の役割に注目し、法改正に伴う成果と課題が整理されている。そして、第7章では、自殺対策の限界が述べられている。なお、補論として、シリア・アレッポの大学生へのアンケート調査に基づく、イスラム教徒の自殺抑制要因も検討されている。行政による対策のみならず、我々ひとりひとりの主体的な関与が不可欠という著者のメッセージは、今後の自殺問題を考える上で重要な論点となるだろう。

https://www.minervashobo.co.jp/book/b487437.html

これまで個人の問題とされてきた自殺は、なぜ社会の問題と捉えられ、政策上の課題となるに至ったのか。また自殺対策基本法や自殺総合対策大綱をはじめとした近年の一連の対策は、どのような過程を経て展開してきたのか。本書では、自殺対策という公共政策について一次資料や対策関係者へのインタビュー等の分析を基に検討を行い、その政策過程を描き出すとともに、対策の課題や限界性を論じる。

目次:

はしがき
序 章 「自殺対策」という政策課題
第1章 自殺対策の夜明け前──精神医療従事者たちの自殺に対する問題意識と対応
第2章 社会問題としての自殺の誕生──自死遺児による語りが果たした役割
第3章 自殺対策基本法制定後の政策過程──ライフリンクによる政策提言が与えた影響とその源泉
第4章 地方自治体における自殺対策の成果と課題──東京都足立区を事例に
第5章 自殺予防の意味と実践の変容──社会福祉法人 いのちの電話(東京)を事例に
第6章 自殺対策基本法の改正過程に見る言説の役割──ナショナル・ミニマムとしての自殺対策へ
第7章 自殺対策の限界性──行政による取組から,一人ひとりの主体的な関与へ
補 章 イスラーム教徒の自殺抑制要因──シリア・アレッポ大学生へのアンケート調査から

文責:小田切康彦(徳島大学)