政策起業家が社会を変える

書籍のご紹介です。

書名:政策起業家が社会を変えるーソーシャル・イノベーションの新たな担い手-

M・ミントロム 著
石田 祐 訳
三井 俊介 訳

出版年月日:2022年03月30日
ISBN:9784623093199
出版社:ミネルヴァ書房

概要:

本書は、公共政策におけるイノベーションを促進するため、他者と協力しながら政策決定等に積極的に関与するアクターである「政策起業家」を取り上げた翻訳書である。第1章では、政策起業家の定義や特徴が開設された上で、代表例として、ケン・リビングストンの気候変動への取り組み、ボブ・クレインの幹細胞研究への投資、ウイリアム・ヘイグの性的暴力撲滅活動、アロイシア・イニュンバのルワンダ政治、について事例紹介がなされている。第2章では、政策起業家の行動パターンや戦略等が取り上げられており、戦略的思考、問題のフレーミング、チームビルディング、リーダーシップ等をトピックとして検討がなされている。第3章は、政策決定過程における政策起業家の役割や行動に関する理論的アプローチが検討され、増分主義、エリート主義、制度主義、多元的流路アプローチ、断続均衡理論、アドボカシー連携フレームワーク等が取り上げられている。第4章は、政策起業家の行動に影響を与える要因、政策起業家の活動および政策イノベーションに対する影響力、政策起業家が用いる特定の戦略や手法の有効性、そして、政策起業家の行動とダイナミックチェンジの出現との関係性、について整理が行われている。第5章では、政策起業家に関する将来の研究の方向性として、環境要因、戦略、活動に対する評価、ダイナミックチェンジ、等に関する検討が行われている。第6章では、政策起業家がどのように新たな政策論議を提示するか、いかにアドボカシーグループと関係構築するか、ダイナミックチェンジにどう影響を及ぼすか、という問いについてさらなる検証が行われている。そして、最後に、補論が設けられている。これは、訳者による日本の事例を踏まえた整理である。日本における政策起業家のあり様や重要性を理解する上で大変興味深い章である。

https://www.minervashobo.co.jp/book/b599924.html

政策起業家とは、ビジネスでは解決できない多様な社会課題を解決するための公共政策を実現させ、社会変革を促進させる人々の事である。本書は、約30年にわたり研究している著者が、世界各地の事例を踏まえて、政策起業家が採るべき戦略・活動しやすい環境・成果などを解説したものである。また、実際に岩手県陸前高田市を中心に政策起業家として活動している訳者の事例も、本書の理論に基づき紹介。今後の持続可能な社会を築くための政策決定プロセスを考える上で有用な一冊。
(原著:Michael Mintrom(2020)Policy Entrepreneurs and Dynamic Change , Cambridge University Press.)

目次:

日本語版刊行にあたって
第1章 チェンジ・エージェントとしての政策起業家
第2章 政策起業家とはどのような行動をする人物なのか
第3章 政策決定プロセスにおける政策起業家
第4章 政策起業家が出現する環境要因と影響の評価
第5章 将来の研究の方向性
第6章 不確実性の高い世界における公共政策の推進
補 論 なぜ政策起業家は重要なのか──NPO法人SETの事例を中心に
訳者あとがき──ビジネスではすべての社会問題は解決できない

文責:小田切康彦(徳島大学)