AIはどのように社会を変えるか

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書名:AIはどのように社会を変えるか-ソーシャル・キャピタルと格差の視点から-

著者:佐藤嘉倫・稲葉陽二・藤原佳典編

出版社:東京大学出版会
ISBN:978-4-13-050205-4
発売日:2022年03月25日

概要:

本書は、AIやICTが社会的格差を拡大させるのか否か、そして、ソーシャル・キャピタルがそこに何らかの影響を及ぼし得るか否か、という問題に対して計量分析を駆使してその解明を試みたものである。まず序章にて、本書の問題意識と、AI、ソーシャル・キャピタル、格差、という3つのキーワードがあることが述べられている。第1章では、労働者の既存の業務について、AIによって代替できるか否かをデータ分析によって検討しつつ、業務とソーシャル・キャピタルの関係、コモンズの視点等を検討している。第2章では、ソーシャルメディアにおけるAIと社会関係をテーマに、その同質性やネットワーク空間等について分析されている。第3章では、人と機械の関係を、信頼性という視点でとらえ、信頼ゲームによる経済実験が行われている。第4章は、職場のソーシャル・キャピタルから家族等の地域社会の人々とのソーシャル・キャピタルの代替が生じるか否か、それにより人々の生活がどう変わるか、といった論点が検証されている。第5章では、AI関連機器・サービスの利用経験やその利用志向、AIがもたらす社会変化に対する反応を、AI親和性としてその規程要因を探っている。第6章では、社会学の観点から、AIを備えたロボットが家族の一員になれるか?というリサーチクエスチョンを検討している。第7章では、AI搭載人型ロボットを中学校の授業において活用することによる生徒の変化について検討がなされ、教育現場でのAIロボット導入の効果と課題が整理されている。第8章では、AIが保健医療福祉課活動において活用される際の意義と課題について、医療機関や地域包括ケアシステム等の実践例を基に記述がなされている。第9章では、自治体におけるAI活用について、その活用志向と地縁的活動、地域特性等との関連性について検証を行っている。そして、終章にて、コロナ時代におけるAI、格差、ソーシャル・キャピタルの方向性についてまとめられている。

http://www.utp.or.jp/book/b597530.html

AIが社会に進出してゆくにつれ、社会的格差を拡大させる、仕事を奪われる、人間の知能を超えてしまう、などの懸念がひろがっている。ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)はこのような危機を緩和することができるのか。AIと社会の関係を実証的に問い直す社会科学の試み。

目次:

はしがき
序章 AIへの認識とソーシャル・キャピタルの関係(稲葉陽二・戸川和成)

I 理論編
1章 AIは職を奪うのか、格差を拡大させるのか?(稲葉陽二・立福家徳)
2章 AIによるレコメンドと社会関係(高木大資)
3章 人間か機械か――経済実験による信頼と信頼性(奥山尚子・澤田康幸・八下田聖峰)
4章 ソーシャル・キャピタルと時間調査からみたAIの影響(須田光郎)

II 社会実装編
5章 AIへの親和性と格差――AI認識調査からの知見(小藪明生)
6章 AIを備えたロボットは家族の一員になれるか?(佐藤嘉倫)
7章  教育現場におけるAI搭載人型ロボット導入の効果と課題(露口健司)
8章 人工知能はどのように保健医療福祉活動を変えるか――現場の視点から(藤原佳典)
9章 自治体のAI利用の可能性を探る
終章  AI、社会的格差、ソーシャル・キャピタルの関係に関する総合的考察(佐藤嘉倫)
あとがき

文責:小田切康彦(徳島大学)