国際学会に参加して――13th ISTR AP Conference(Cebu)参加報告

羅 歌

 2025年4月23日〜25日に、Philippines・Cebuで開催された「13th ISTR AP Conference」に参加しました。ISTRは、非営利組織(NPO)や市民社会、ボランタリー・セクターを対象とする国際的な学会であり、アジア太平洋地域の研究者・実務家が一堂に会する本大会は、第三セクター研究の現在地を俯瞰できる貴重な機会です。 

 私自身、国際学会への参加は今回が2回目で、国内では日本NPO学会の学術大会にも参加しており、学会とは多様な背景をもつ人々が同じ社会的テーマに関心を寄せ、互いの視点を持ち寄って議論を深める場である、というイメージを持っていました。そうしたイメージを携えて参加した今回の会議でも、国や文化が異なる研究者が同じ課題に向き合う姿に触れ、学術的関心が国境を越えて共有されることを改めて実感しました。一方で、実際の現地参加では、想像していた以上に心を動かされ、学びにつながる場面も多くありました。 

報告概要 

 本大会では、指導教員とともに Optimizing Fundraising Strategies for Japanese Nonprofits: A Study of Organizational Characteristics and Giving Revenue Ratios を報告しました。日本の非営利組織を対象に、寄付収入比率が、組織特性や組織戦略とどのように関係するのかを検討した研究です。データにはJapan Institute for Labour Policy and Training(JILPT)2014年調査を用いて推定しました。寄付比率には0%・100%に張り付く観測が含まれる点を踏まえ、推定方法にも配慮して分析を行いました。分析では、メディア露出、公益性を高める戦略、財務基盤強化や人材育成といった要素が、組織規模によって異なる形で寄付比率と関連しうることを示し、寄付獲得の実務的含意についても議論しました。  

国際学会に参加して感じたこと 

 今回印象に残ったのは、開催者および現地の方々の温かさと、会議運営の丁寧さです。学会のセッションに加え、現地の風土や文化に触れる機会も用意されており、学術的な交流だけでなく、開催地の社会や日常に触れる時間があることで、第三セクター研究が地域社会と密接につながっていることを体感できました。 

 研究面では、同じ「寄付・資金調達」を扱うテーマでも、国や地域によって制度、寄付文化、ステークホルダー構造などの前提が大きく異なるため、結果を示すだけでなく「なぜその問いが重要か」「どの文脈で意味を持つのか」をより明確に言語化する必要があると強く感じました。国内では自明に思える背景も、国際的な場では丁寧に説明しなければ伝わらないため、国際学会は研究内容を磨く場であると同時に、研究の“見せ方”を鍛える場でもあると実感しました。 

 また、英語でのやり取りについては、質疑応答そのものよりも、セッション外の雑談や短い会話のほうが難しいと感じました。発表は準備によってある程度コントロールできますが、休憩時間の会話は即興性が高く、緊張もしやすいです。一方で、そうした会話の中でこそ、「この変数はどのように測定したのか」「次にこういう分析をしたら面白いのでは」といった具体的で建設的な示唆を得られることも多く、ネットワーキングの価値を改めて認識しました。 

 さらに今回、発表後に小グループでのディスカッションの時間が設けられていた点も特徴的でした。発表者と聴講者が背景の共有や問題意識のすり合わせまで含めて議論できることで、意見交換が単発の質疑に留まらず深まりやすくなります。その結果として、研究の前提や指標の意味づけを改めて整理し直すことになり、より本質的なフィードバックを得ることができました。M2として修士論文の完成に向けて研究の方向性が固まりつつある時期に、発表コメントに加えて、論文全体をどう磨き上げると国際的な議論に接続しやすいかという助言も得られたことは、大きな収穫でした。 

今後につなげたいこと

 今回得たコメントや気づきを持ち帰り、分析と議論の精緻化を進め、研究としての完成度を高めていきたいと考えています。また、国際学会では、研究者の方々が研究対象の実情を深く理解し、ときに当事者として活動に関わった経験を踏まえて議論している姿が印象的でした。そうした姿勢と比べると、私自身はまだ研究と資料の上で理解を進めている部分が多く、現場との接点を十分に持てていないという課題を自覚しました。今後は、研究を進めるだけでなく、可能な範囲でNPOの活動に参加し、実践の中で得られる視点や問いを研究に還元できるように取り組みたいと思います。関西学院大学での研究活動の中でも、国際的議論との接続を意識しながら研鑽を重ねてまいります。 

 なお、このたびは日本NPO学会の「若手研究者への国際学会参加支援助成金」によりご支援を賜りました。ここに記して心より御礼申し上げます。