
書籍のご紹介です。
著書名:アートプロジェクトの可能性-芸術創造と公共政策の共創―
著者:谷口 文保
出版年月日:2019年9月18日
出版社:九州大学出版会
ISBN: 978-4798502694
概要:
全国津々浦々で展開するアートと地域のコラボレーション。今やコミュニティ再生や町おこしの切り札となったアートプロジェクトだが、この潮流はどこから来て、どこへ向かうのだろうか?
本書は、アートプロジェクトの成立と変遷を現代芸術・文化政策・市民社会の観点から跡づけ、さらに表現活動を通して人々をつなぐ仕組みと方法を、教育・まちづくり・福祉に関する事例をもとに実証的に解き明かそうとするものである。そして、芸術創造と公共政策の重なり合う場に生まれる活動の意義を俯瞰的に論考する。
芸術家として、大学教員としてアートプロジェクトを多数実践してきた著者が、その経験をもとに調査研究を展開。実証的論考を通して、アートプロジェクトの可能性と課題を明らかにする。
https://www.ajup-net.com/bd/isbn978-4-7985-0269-4.html
本書では、芸術創造と公共政策の共創を誘発するアートプロジェクトの有用性をどう評価するかという論点が提示され、それを教育、まちづくり、福祉等の実践事例を通じて検討がなされている。
アートプロジェクトの仕組みは、住民参加、共同制作、領域横断によって表現と交流の循環が発生し、その結果として、共創表現、共生作用、地域再編が創出され、それが持続可能な社会の形成につながっていることが明らかにされているという。
その他、プロジェクトにおける著作権の問題や、地域固有の文化の創出、共創のバランス、リーダー育成、記録と公開といった課題があることも指摘されている。
芸術創造と公共政策の共創を通じた共生社会の促進可能性を示した興味深い論考といえる。
文責:小田切康彦(徳島大学)