創造社会の都市と農村

書籍をご紹介します。

著書:創造社会の都市と農村-SDGsへの文化政策-

著者:佐々木雅幸 監,敷田麻実・川井田祥子・萩原雅也 編

出版年月日:2019年7月2日

出版社:水曜社

ISBN: 9784880654652

概要:

本書は、創造都市・創造農村をテーマに、SDGsの観点も踏まえながら、創造性社会の描写を試みた意欲作である。京都や大阪、大分、新潟等における文化施設関連事例を基にした創造都市の検討、奄美や神山町、珠洲市等を事例にした創造農村の検討、そして、東アジア文化都市のネットワーク、アマゾンのソーシャルデザイン、歴史的文化遺産におけるクリエイティブヘリテッジ、障害福祉施設における包摂、といった創造社会の新しい姿が提議されている。

http://suiyosha.hondana.jp/book/b451793.html

2015年国連サミットでの「持続可能な開発目標(SDGs=Sustainable Development Goals)」の採択以来、世界各地の地域政策はもちろん民間ビジネスにおいても持続可能な社会の実現を推進しようとする取り組みが活発化している。わが国では、これまで佐々木雅幸が「創造都市」と「創造農村」を提言してきた。「創造都市」では包摂的で安全かつレジリエントで持続可能な都市および人間居住地を実現するべく、すでにユネスコ選定の諸都市が180に及び、具体的な都市ごとに個別の目標を設定し取り組みが取り組みが進められている。

一方「豊かな自然生態系を保全する中で固有の文化を育み、新たな芸術・科学・技術を導入し、職人的ものづくりと農林業の結合による創造的問題解決を行えるような『創造の場』に富んだ農村」 を「創造農村」と位置づけ、わが国固有の新たな取り組みが各地で進む。

本書は、地域課題の先にある「創造性社会」に向けたSDGsのゴールとなる経済・社会・環境問題を包括的にとらえ、ローカルとグローバルな文脈で意味づけながら、創造性とイノベーションを発揮しながら地域課題の解決に取り組む試みを、15人の筆者がそれぞれの視座から捉え、報告し提議する。

目次:

序 創造都市・創造農村の到達点と新地平
【第1部 創造都市】
第1章 文化資源としての廃校と創造都市形成 —京都市の事例から
第2章 都市とメディアとミュージアム —大阪の美術館をめぐる考察
第3章 アートプロジェクトと文化創造地域政策 —大分県における事例を中心に
第4章 大都市における創造農村的取り組みへの展望 —地域社会の課題解決に向けた文化芸術の取り組み
第5章 リノベーションによる創造地区から創造都市への発展 —新潟市中央区を事例として

【第2部 創造農村】
第6章 創造的な資源利用は農村を豊かにするか
第7章 和菓子と地域農業 —「白小豆」を巡る取引形態
第8章 文化を基盤としたレジリエンス —奄美の維持可能な発展への挑戦
第9章 フットパスによる創造的地域づくり —共創のエリアデザイン
第10章 創造農村と維持可能な社会の実現 —神山町と珠洲市におけるSDGsへの接近

【第3部 新領域】
第11章 東アジア文化都市と創造都市のネットワーク
第12章 創造農村のためのデザイナーの役割と支援ファクター —アマゾンのソーシャルデザインの事例から
第13章 歴史的文化資産を活かした創造的地域の形成 —リビングヘリテッジをクリエイティブヘリテッジへ
第14章 包摂型社会の具現化に向けて—障害福祉施設の実践に学ぶ
終章 創造社会の扉をひらく

文責:小田切康彦(徳島大学)