福祉NPO・社会的企業の経済社会学

書籍のご紹介です。

著書:福祉NPO・社会的企業の経済社会学:商業主義化の実証的検討

著者:桜井 政成 著

出版年月日:2021年10月20日

出版社:明石書店

ISBN: 978-4750352701

概要:

本書は、2000年代以降、新自由主義的改革の潮流において、NPOの変化としてしばしば指摘されてきたは商業主義化、すなわち、ミッション・ドリフトや資金調達への傾倒といった実態の有無を、経済社会学的視点から実証した意欲作である。まず第1章では、福祉サービスを供給するNPOが、新自由主義的なアプローチによって「交換」に基づく経済活動に重点を移した結果、商業主義化が生じることが主張される。つづいて、第2章から第4章では、その商業主義化仮説の実証分析が展開される。都道府県別の特定非営利活動法人数の分析(第2章)、京都府における特定非営利活動法人の2005年度財務諸表のデータ分析(第3章)、京都府および滋賀県のグループ・ホームの第三者評価結果に基づくデータ分析(第4章)、京都府内の訪問介護事業者を対象とする調査データ分析(第4章)、等からは、商業主義化仮説は支持されないことが明らかになる。そして、第5章から第9章では、社会的企業を対象とした分析が進められる。社会的企業の概念整理(第5章)、長野県の宅老所開設者へのインタビュー調査分析(第6章)、宅老所を運営する特定非営利活動法人へのインタビュー調査分析(第7章)、若者就労支援事業に従事する 非営利法人及び営利法人のケーススタディ(第8章)、まちづくりサポートセンターによる調査データ分析(第9章)、農村部のコミュニテイ・ビジネスの事例分析(第9章)、など多様な実証的検討が行われている。そして、最後第10章では、カナダの社会的企業の検討を通じ、商業主義化をめぐる今後の議論の方向性が提示されている。

https://www.akashi.co.jp/book/b593665.html

経済や社会から排除された人々を再び包摂する活動を行うNPOは、市民社会を創れなかったのか? 新自由主義的な政策が進んだ四半世紀を、経済社会学・社会政策学・社会福祉学の知見を総動員して分析。ロスジェネ世代の著者が国内外で報告を重ねて完成させた渾身の書。

目次:

はじめに
第1章 社会的排除/包摂とNPO――果たすべき役割への期待と課題
第2章 NPO法人の実態と「事業型NPO」
第3章 事業型NPOの特徴とその発展課題――京都府NPO法人の財務データ分析から
第4章 準市場におけるNPOの変容?――介護保険制度下における非営利=営利のせめぎあい
第5章 NPO概念の定着と社会的企業概念の拡散――NPOから「ソーシャル」へ
第6章 ソーシャル・イノベーションの普及過程――長野の宅老所事例分析
第7章 社会的企業設立時のNPO・営利企業の選択――コミュニティへの志向による違いの分析
第8章 若者就労支援団体による社会関係の埋め込み
第9章 コミュニティビジネスにおけるソーシャル・キャピタルの制約――当事者主体という罠
第10章 結論と見通し――カナダの社会的企業の検討から対抗条件を探る
おわりに

文責:小田切康彦(徳島大学)