The 26th IPSA World Congress of Political Scienceに参加して

筑波大学人文社会系・助教
大倉 沙江

2021年7月10日から15日にかけて、第26回世界政治学会(https://www.ipsa.org/)が開催されました。当初はポルトガルのリスボンで2020年夏に開催される予定でしたが、COVID-19の流行により、2021年夏にオンラインで開催されることになったものです。おもに政治学者の集まる学会ではありますが、市民社会に関するセッションも少なくありません。具体的には、エリートとの関係、市民社会が民主化に果し得る役割、ガバナンス、政策実施、保守的な市民社会組織に関する分析など、多岐にわたるテーマがカバーされていました。市民社会の政治的側面について関心のある研究者や大学院生にとっては、格好の学びの場なのではないかと思います。

私自身はCivil Society and (Local) Governanceというセッションで報告をしました。具体的には、市民社会におけるジェンダー平等の旗振り役となりうる女性運動の態度を中心に、エリートと有権者の態度を検討しました。分析の結果から、①保守政党、経済団体、農業団体などのエリートや男性有権者は、女性運動は必要ないと考えていること、②そのいっぽうで女性運動、市民運動、労働組合などのカウンターエリートと50歳代以下の女性有権者は、女性運動は必要であると認識していることを明らかにしました。また、このように女性運動への態度が分かれる理由として、ジェンダー平等の実現は望ましいかどうかというジェンダー平等に対する規範的態度と、日本社会には性別に基づいた不平等があるかどうかというジェンダー平等認知が影響をしていることもあわせて明らかにしました。

日本時間の午前、アメリカ時間の午後、ヨーロッパ時間の深夜に開催されたため、ヨーロッパからの参加者が少なかった点は残念でしたが、他の研究者と有意義な意見交換をすることができました。なお、今回の報告は、日本NPO学会2021年度若手研究者への国際学会参加支援助成金の支援を受けてかなったものです。学会の皆様のご支援に、心から感謝を申し上げます。