近年、NPO、NGO、あるいはそれを支えるフィランソロピー、ボランティアなど、民間非営利セクターの活動が、世界各国・地域で大いに注目されています。特に日本では、特有の官民関係に制度疲労が生じるなかで、公共サービス供給のもう一つの担い手として、NPOへの期待は非常に大きいものがあります。多様な価値観の併存を受容する、真の市民社会を実現するために、NPOの果たすべき役割はきわめて重要であると考えます。また、阪神・淡路大震災を契機に本格化したNPOの制度改革の動きは、3年あまりの歳月を経て、市民団体の法人格取得を容易にするための「特定非営利活動促進法」の国会成立までようやく到達し、一つの節目を迎えたといえるでしょう。
このように、NPOの活動は、我々の経済社会にとって重要な役割を果たしており、政策的にも重要な位置を占めるようになっていますが、NPOに関する客観的、科学的な現状分析は緒についたばかりであり、また経済社会におけるNPOの役割や制度・政策のあり方についても、十分な議論がなされているとは言いがたい状況にあります。
民間非営利活動を対象とした研究・教育の現状をみると、複数の学問分野で、少数ではあるが、精鋭の研究者の手によってすでに研究が開始されているほか、いくつかの大学では、NPOやボランティアに関する学生や社会人を対象としたコースを開設しています。しかし、残念ながら、現在のところ様々な分野の研究者や実務家の間で、十分な会話が行われているとは言い難い状況にあり、研究・教育の交流や情報発信を行う場を求める声は、日増しに大きくなっているように思われます。世界的にみても、すでに非営利セクターに関する研究・交流のための国際学会や地域学会を含む相当数のネットワークが組織され、活発な活動が行われており、こうしたなかで、日本およびアジア・太平洋地域の研究・交流拠点の早期形成を図ることは、国際社会からの要請ともなっております。
我々は、こうした声に呼応し、またこの分野の研究・教育における学際的な観点の重要性、および研究・教育と実務の接点の重要性にかんがみ、ここに「日本NPO学会」(Japan NPO Research Association, JANPORA)を創設することを決定いたしました。今後、本学会を中心とした交流や情報発信を通じて、NPOに関する研究と活動の裾野を大幅に拡大するとともに、研究・教育水準を飛躍的に高めたいと祈念しております。
民間非営利セクターの活動に関心を持つすべての研究者、実務家および政策関係者の結集と積極的な参加を切にお願いいたします。
1998年8月
NPO学会発起人一同